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SPECIAL 18

  セブンデイズ ラプソディ

更新日:2008年6月22日


今回の感想は、ルパン三世M(深山雪男)第5巻に収録されている「 セブンデイズ・ラプソディ」との比較を盛り込みつつ、行いたいと思います。

【ストーリー】
世界最大のダイヤモンド「女神の涙」をめぐる1週間を描いた物語。
ルパン、次元、不二子はそれぞれの立場や思惑から、「女神の立場」に関わっていきます。
五右ェ門は、ルパンもしくは不二子のサポート役として参加。
メインキャラが、それぞれ敵対しつつ協力しつつ、距離をとりつつと、立ち居地を変えながら繰り広げる1週間。
「バラバラに進行する物語が、次第に大きな物語へと収斂されていく」という演出を狙ったのでしょうが、残念ながら物語のバラバラさだけ目立ってしまいます。
さらに、ゲストキャラが多すぎて、散漫な印象。
話の大筋はMルとほぼ同じ展開です。
次元が大佐の部下になる経緯が大きく異なりますが、この点に関してはMルの方が上手く描いていたと思います。
「少女を助けるおじさまルパン」「次元の過去の女と因縁の相手」「五右ェ門の頬染め」「ルパンと次元の対決」「自由の女神に大きなダイヤ」と
、過去作品の人気(とされている)エ ピソードを数多く盛り込んでいます。
しかし、それが、作品の「つぎはぎ感」を強くしてしまっていました。

【作画】
セカンドリスペクトな作画。
のっぺりとしてテカテカした画面で、安っぽい印象を受けてしまうのが残念です。

【アクション】
動きもあまり良くはありませんでした。
アクションシーンは効果線やキャラの決めポーズのアップでごまかさないで、ちゃんと動かして欲しいところです。

【世界観】
テレスペ初期(出崎ルパン)のハードボイルドな世界観よりは、セカンドのコミカルな世界観に近いです。
しかし、無駄にカッコをつけようとして、逆に恥ずかしいシーンもちらほら。
冒頭、ミシェルを助けるルパンが「俺は今機嫌が悪いんだ」とすごむところなど、ありきたりのチンピラ・ヒーローのようで興ざめでした。

【OP&ED】
OP…ルパンの計画=1週間後のマンハッタン・ステークスでの計画を描いたOP。
乗馬で逃げるルパンは珍しい。しかし、全体的にテンポが悪くて残念。
OPは、テレスペルパンの花。「これから『ルパン』が始まるんだ!」と楽しみにできるようなOPにして欲しいところです。
「燃えよ斬鉄剣」「ファースト・コンタクト」「お宝返却」のようなダイナミックアクションを魅せるOPに固執しているわけではありません。
「アルカトラズ」のようなアダルトな雰囲気や「カリオストロ」のような切ない世界観のOPもすばらしいと思っています。

ED…の後に7日目=日曜日のオチがついてきます。
マンハッタン・ステークスは雨で中止。もちろん、ルパンの計画もおじゃん。そこに銭形警部が登場して追っかけっこと、いつもどおりの展開。
ED後にオチがあると、おまけ感があってちょっと嬉しいです。

【ゲスト】
ミシェル
…クラリスのエピゴーネン。
率直に言って、あまり魅力のないゲスト・ヒロインでした。
パパの財力を嵩にきて、生意気な物言いをし、おてんばで、グラマナスな体を持ったクラリスを意図したのでしょうか。
クラリスそのままの「清楚で芯が強くおしとやかな少女」を出すわけにもいかないのも分かりますが…。
「天使の策略」感想でも述べていますが、Mルに比べてテレスペ版では、ゲスト女性は露出度が高く、女性性を極端に意識させる服装をしています。
場違いなお色気ファッションやドレス姿は、滑稽さを感じさせてしまいます。
ミシェルの服装も、テレスペ版とMルでは与える印象が異なる服装をしています。
●初登場時
 テレスペでは、ジージャンのインナーにキャミ(チューブトップ?)、フレアミニというスタイル。
  Mルでは、ノーカラーのシャネル風スーツで、コンサバティヴな印象を与えます。
●ホテル
 テレスペ版では、なぜかストラップレスのロングドレス。
 「外ではカジュアルでおてんばだけど、正装をすれば育ちのよさがにじみ出る」という演出のつもりなのでしょうか。
 Mルでは、タンクトップにハーフスパッツと、露出度は高いものの健康的なカジュアル。室内着だとこれくらいラフな服装も「あり」でしょう。
●ラストシーン
 テレスペ版では、タンクトップにデニムミニでボディコンシャスなスタイル。
 ストラップがずれており、ルパンに「レディなのだからきちんとしなさい」と言われま
す。
 Mルでは、ノースリタートルにボックスプリーツのミニ。露出度がテレスペ版に比べて控えめで、若いお嬢さんらしいスタイルです。
 もちろん、ノースリタートルです
ので、ス トラップがずれるという扇情的な演出がなされることもありません。

大佐…テレスペでは、哀れな悪役。Mルでは、次元の過去の恩人。
テレスペとMルで最も描写が異なっていたのが、次元と大佐に関する話です。
テレスペでは、次元とは面識がなく「いい腕を持っていて、ルパンへの抑止力になる」という理由で、次元を「雇い」ます。
Mルでは、自らの体を張って次元を守った恩人であり、任務遂行のためには自分の命を懸けることもできる人物として描かれています。
テレスペの大佐には同情心は沸きませんが、Mルの大佐には罪をつぐなってミシェルと幸せに暮らして欲しいと思わせます。

ライアット…次元の過去の因縁の相手。
テレスペでは、次元の過去の恋人(?)の王女様の命を守ることができなかったという経緯がありましたが、Mルでは「かつての傭兵仲間」程度でした。
しかし、この王女様のエピソードは、一体何のためにあったんだろう…。
「次元の過去の女」というセカンドで登場した人気モチーフを使いたかっただけなんでしょうか。

その他…ファイヤー、ダノンとゲストが多すぎる。ファイヤーの尻すぼみな扱いは哀れを誘いました。

【ルパン】
ロリコンルパン…。
クラリスは命の恩人だったという経緯があったので分かりますが、ミシェルはただの通りすがり。
とはいえ、通りすがりであっても、困っている人(特に女性)には親切にするのがルパンのいいところ、というのはまだ理解できます。
しかし、ミシェルのバストを「ボイン」と言って発情しているようでは、もう「ロリコン」の汚名は返上できないような気がします。
しかも、マンハッタン・ステークスでの仕事計画書をミシェルに見られてしまうという迂闊さ。
最後には、銭形警部にまで計画書を見られてしまいます。…どこまで間抜けなんだろう。
MIX地下兵器工場での次元との一騎打ちの際も、大爆発が起こり、ミシェルが攫われているのに決着をつけようとしているシーンは、情けなくなります。
こんな非常事態に、わけのわからんカッコつけをするほど、ルパンは(次元も)愚かではありません…。
最終決戦では、ズボンなしというお間抜けなスタイルでしたが、この演出は管理人は嫌いではありません。
セカンド「鉄トカゲ」でも、いい場面なのにパンツ一丁というシーンがありました。
セカンド・ルパンらしい肩の抜け加減を踏襲しようとした試みは評価したいです。
しかし、次元に「その格好なんだ」と言わせてしまうのは、逆に野暮に感じました。難しいんですけどね、このあたりのサジ加減は。
ちなみに、ペーパーメディアを使用したり、ワルサーP38を使い続けたり、携帯も持っていない、という時代錯誤設定は、「おじさまルパン」を演出するためなんでしょうね。

【次元】
本作の致命的な欠点の一つは、「次元の魅力」を描けていない点だと思います。
テレスペで他のメインキャラがトンチンカンなキャラ付けをされていても、次元のキャラ付けだけはブレることはあまりありませんでした。
それだけ完成度の高いキャラクターだと言うことでしょうし、その「安心感」が次元の身上だとも思います。
しかし、本作の次元は駄目すぎました。「次元のプロ意識」と「ルパンとの絆」に関してここまで破綻している作品は珍しいです。
どうして、契約書に縛られて、ルパンを殺さないといけないのかわかりません。
そもそも、「雇い主」である大佐に対しても、あまりいい印象を持っていない様子なのに。
話を持ち込んだライアットには、昔の恋人を守れなかった男という不信感しか抱いていません。
契約書にサインした場面でも、ライアットにせかされて、場の空気に飲まれてしまって・・・という印象で、「ハードボイルドな男の美学」の代名詞ともいえる次元らしからぬ振
る舞いです。
本作の大きな目玉の一つ、「ルパン対次元」というシチュエーションに持ち込むための背景づくりなのでしょうが、次元のキャラが崩壊しています。
Mルでは、大佐は次元の命の恩人でした。
大佐の人間性も「任務のために自分の命を懸ける人物」として描かれており、次元が信頼感を持つ相手としてふさわしいキャラ作りがなされて
います。
次元に「大佐の敵はルパンだ」ということを知らせずに仲間にした点は、「上手くはめた」とも言えますが、次元がルパンと対決するには納得のいく展開でした。
Mルでは、ルパンと次元の一騎打ちのシーンは、素直に「かっこいい」と思わせてくれました。
特に深山氏は、次元を魅力的に描く方ですので、次元の苦悩とプロ意識を存分に堪能できます。
弾切れでドロー、という決着の付け方はベタですが、上手い着地点だったと思います。
少なくとも、爆破現場で、ライアットもいない、ミシェルも攫われた状況で構えあったままという滑稽なテレスペ版よりは、はるかに良かったです。

【五右ェ門】
本作では、全般的にギャグ担当。
ルパンとのコンビ行動は珍しいです。しかし、命を狙われている状況で、ルパンを一人置いてNYに帰らないでほしい。
Mルでは、ちゃんと場を収めてからその場を去ります。Mルの演出の方が、ルパンに対しても義理堅い五右ェ門らしくて好感が持てます。
不二子の尻にしかれていましたが、ポッと出のゲスト女性に騙されるよりはよっぽどマシだと思います。
宝石を盗み、逃走するシーンでは、銃弾で掃除機に穴を開けられてしまい、宝石で「パンくず」状態…。
Mルでは、警報機が鳴ってすぐに不二子を抱えて逃げます。
テレスペではお間抜けなキャラ付けでしたが、Mルではそれなりにかっこよく描かれていました。
ラストの「うらやましい」は、2nd「殺しはワインの匂い」(もったいない、それならそれで拙者が行ったのに)、「カリオストロ」(可憐だ…)のオマージュなんでしょうか。

【不二子】
ルパンとは別行動で「女神の涙」を狙いますが、手を組んだダノンに騙されるオチ。
ゴエのことは、弟かペットだとでも思っているのでしょうか?
五右ェ門とホテルで同室でも、平気でシャワーを浴びてガウン姿で登場します。
これは、セカンド「非常ベルにルパンは笑う」のオマージュなんでしょうね。

【銭形】
ストーリー上、いてもいなくてもいい扱いでした…。
ED後のオチだけ、存在感がありました。

【ル次五の仲間度】
次元も五右ェ門も、ルパンよりも自分の事情を優先していたところが悲しすぎます…。
状況によってルパンと行動を共に出来ないことがあるという話なら分かりますが、
本作で描かれた「二人が相棒であるルパンより他者を選ぶ理由」が理解できません。
どうして、次元にとって「契約書>ルパン」、五右ェ門にとって「不二子との仕事>ルパン(命を狙われているまっ最中)」になってしまうんだろう。
「ルパン対次元」は見どころではありませんでした。ハリボテの設定によるためか、危機感が演出できていません。

【総合】
ルパン一味(ル次五不)をバラバラに行動させて、最終的に1つのお宝の元に結集するという物語はおもしろいですが、消化不良だったのが残念。
キャラの魅力と関係性を、ずれた解釈で描いていたことが致命傷でしょうか。
4人がそれぞれのコンビで仲良くしているシーンが、チラホラとあったことは嬉しいかったです。
(ル五、ル次、五不、ラストの次五の不二子とミシェルを見ながらのボソボソやりとりなどなど。)
コネタではなく、ストーリー本筋でメインキャラを上手に動かしてくれれば、もっと楽しめる作品になったのではないでしょうか。

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