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SPECIAL 11

  愛のダ・カーポ~FUJIKO'SUnlucky Days~

更新日:2008年7月20日


【ストーリー】
ようやく不二子メインのテレスペです。にもかかわらず、ゲストヒロインが出てきます…。
テーマは「愛(恋愛、親子愛)」と「記憶(もしくは思い出)」
秘宝「コロンブスの卵」を めぐるデータを唯一記憶している不二子が、逃走時のショックから記憶喪失になってしまいます。
不二子(の記憶)をめぐって、ルパン、バートン&ナザレフの悪役チーム、そしてトレジャーハンター・ロザリアの三つ巴の攻防戦。
ルパンとロザリアは手を組み、バートンたち悪役と対決へ…と思いきや、実はバートンとロザリアは生き別れの親子だったという展開。
今作では、お宝は「コロンブスの卵」ではありますが、その所在に関するデータを唯一知る不二子もお宝として扱われているといってもいいかもしれません。
ルパンは、お宝目当てというよりは不二子の安全が目的でしたし、悪役ナザレフも不二子への執着をみせています。
「カリオストロの城」でクラリスの心を盗んだように、本作では不二子の記憶を取り戻すことが主題となっています。
(不二子の記憶は、思い出といってもいいでしょう。そしてその思い出には、ルパンと不二子の二人の日々も含まれています)

前半~中盤は悪くないストーリー展開だったのですが、後半、ロザリアがバートンと親子の邂逅をした後から、グダグダな展開に。
バートンのキャラが崩壊。涙を流して娘との再会を喜んでいたのに、なぜ娘を殺そうとするのか分かりません。
気象を操れるというすごい力を手にしているのに、自分を実験台にしてパワーオランウータンになる理由が分かりません。

【作画】
一昔前の劇画調なイメージ。
ルパンが濃いハンサム。不二子メインで、テーマも「愛」なのでハーレクインロマンス仕様なのでしょうか?
キャラデザはファーストをオマージュ。ルパンのジャケットだけ赤なのでちぐはぐな感じがします。
次元のネクタイが白っていう完全なファーストカラーは、テレスペでは珍しいです。

【アクション】
かっこよくなかった…。動きがあまりよくないところが残念です。
アクションシーンとして最大の見せ場の一つである竜巻のシーンも、次元が、ナザレフを銃で撃ち落せばよかったんじゃ?
いや、そもそも、五右ェ門が先に竜巻を斬っちゃえばよかったんじゃ?と思ってしまいました。

【世界観】
オーソドックスなルパンワールド。
薀蓄たっぷりのお宝は、テレスペルパンの「お約束」。

【OP&ED】
ルパンと不二子、二人の逃走劇から始まるOPは新鮮です。

【ゲスト】
ロザリア
…不二子メイン回にもかかわらず、ゲストヒロインを登場させなくてはいけないでしょうか。
男の子にして、ルパンと不二子をめぐる三角関係にした方が盛り上がったのでは、とも思いました。
しかし、記憶を失い、「追われるイメージ」に怯える不二子が身を寄せる相手としては、女性の方が説得力あるのかもしれません。
ロザリア自体は嫌いなタイプではありません。戸田さんの意志のあるしっかりとしたお声が合っていました。

バートン…上記したので割愛。

ナザレフ…千葉繁さんの演技だけで存在感がありました。
ただの小物な悪役、というだけではなく変装の名人でなかなかの知能犯。
不二子にここまでご執心な敵キャラは『暗殺指令』のジョン以来です。
最後も死なくてよかったな、と思わせる悪役でした。憎めないキャラです。

【ルパン】
不二子への愛をしっかり描いてくれたので大満足。ゲストヒロインにばかり目を向けているルパンは寂しいです。
OPの逃走シーンで、不二子をかばっているルパンは、やっぱりかっこよいと思いました。
ベタですが、「おまえに『愛している』と言わせるまで、俺はお前を守る」というセリフが好きです。

【次元】
ギャグキャラでしたが、名バイプレーヤー・次元は健在。
小林さんのお声もハリがあっていいですね。
人工呼吸された相手に銃を撃つのはやめましょうよ。ゴエだから弾いたけど、普通の人なら死んでますよ。命の恩人でしょう…。
「うがいしよ」「歯ぁ磨こう」って言っているのは、仲間だからここまでボロクソ言えるのかなと思ったり。
この人工呼吸シーンは、ファンの間で物議を醸したそうですが、ギャグシーンとしてみれば楽しめたのではないでしょうか?
このシーンで、ル次五がお互いてんでばらばらなことを話題にしているデコボコっぷりがおもしろい。

【五右ェ門】
同じくギャグキャラでした。女にだまされていなかったのことが何よりです。
井上さんのお声が、まだまだ「五右ェ門」らしい若武者声だったのが嬉しいです。
エンジンに話しかけて、気合でなおすシーンは、後半ルパンがバートンの研究所の脱出時にヘリを操作する際に、同じ動作をする前ふりでした。
次元にボロクソ言われても、柳に風なのがゴエらしい。怒ってもいいと思うんですけどね。怒らないのが仲間なのかも知れません。
神殿の奥深くで、敵の気配をいち早く察知するところは、気配に敏感な剣士・五右ェ門で良かったです。

【不二子】
不二子メインなんですが、記憶が無いから別人格で、そしてそれはもはや不二子ではないという…。
記憶のある不二子なら、情報を持っているのは自分だけという状況を利用して、ナザレフをたらしこんで、意のままに動かしたでしょう。
そんな不二子が見たかったです。
メインで扱われているだけ、ゲストヒロインに押されている昨今のテレスペよりマシだと思っています。
増山さんの艶っぽい不二子の声を堪能できます。

【銭形】
あまり存在感がありませんでした。
しかし、「いてもいなくてもいい」というわけでもなく、それなりに見せ場があったと思います。
神殿で、ルパンたちがピンチの時、とっつぁんの乱入で脱出成功!というシチュエーションは、お約束だけど燃えます。

【ル次五の仲間度】
前半、エンストした自動車をわっせわっせと押している次元&五右ェ門と、車にのっているルパンがデコボコ3人組らしくって楽しいです。
不二子の悪口を言われて、黙ってしまったルパンに「怒らせたかな」「拙者は知らんでござる」と顔を見合わせる次元とゴエもかわいい。
神殿で柱を三人で力あわせて押しているのも良かったです。こんなシーンだけでも心が暖まります…。
ゴエが最初からルパン一味として参加しているので、それだけでも嬉しい限りです。
ゴエもルパンの仲間なんだから、ルパン達と行動を共にすることに理由はいりません。
もう少し、ルパンに次元と五右ェ門のことを考えて欲しかったけど、記憶を失った不二子のことで頭が一杯だったのだから仕方ないとも思いました。

【総合】
不二子メイン回であるにも関わらず、記憶喪失という設定のため、不二子の魅力を楽しめないことが、一番残念な点です。
本作が不評の要因の一つともされている「次元&ゴエの人工呼吸シーン」に関しては、さほど問題にすべきでもなかったように思いました。
あれは、ギャグシーンでしょう。
不二子メインで、ルパンと不二子の「男と女の愛」が本テーマに置かれていたので(このテーマを上手く生かせてはいませんでしたが)、
そのパロディとして、相棒男二人の「キスシーンにも見える人工呼吸シーン」を入れてみたのではないでしょうか。
「男二人のキスシーンをパロディ扱いする」ということが「異性愛主義的である。同性愛者に配慮していない」(※1)という意見には同意します。
しかし、このシーンを嫌がっているファンの方は、「男同士のそんなもの見たくない」という異性愛主義者が多いのではないでしょうか。
もしくは、次元とゴエは嫌だけど、ルパンと次元、もしくはルパンとゴエならOKという趣味をお持ちのファンかもしれません。
天然キャラ設定のゴエから次元に人工呼吸をすることで、ゴエには他意がない、という担保にもなっています。
本作の問題点は、ストーリーのグダグダさや、不二子の魅力を楽しめないといった、話の本筋部分にあるのではないでしょうか。

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※1「異性愛主義」とは、男女間の恋愛のみを絶対的な愛情関係であるとして、同性間の恋愛を排斥する考え方のことです。
以下のテキストが参考になります。興味のある方はご一読ください。
「思考のフロンティア クィア・スタディーズ」河口和也/岩波書店/2003年
「クローゼットの認識論」イヴ・コゾフスキー・セジウィック/外岡尚美訳/青土社/1999年
「ジェンダー・トラブル」ジュディス・バトラー/竹村和子訳/青土社/1999年
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