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SPECIAL 7

  ハリマオの財宝を追え!!

更新日:2008年6月14日


【ストーリー】
ハリマオの隠し財宝を巡って、ルパンファミリー、元・英国諜報部員アーチャー卿とその孫娘・ダイアナ、そして謎のネオナチ集団との三つ巴の攻防を描いた物語。
後半、ルパンと次元はアーチャー卿と手を組み、ネオナチ集団とのガチバトルへと物語は展開します。
第二次大戦時の旧日本軍の諜報部員にして、マレーシアの「英雄」として語り継がれる「盗賊・ハリマオ」という近代史の暗部を盛り込んだ話は「テレスペ・ルパン」ならでは。
しかし、その素材をほとんど生かしきれず…。
ストーリーそのものも、何が言いたいのか、何が見せ場なのかが分かりませんでした。
「とりあえず、それっぽくルパン達を動かしていればいいだろう」という雰囲気で、非常に残念な作品です。

【作画】
1stオマージュな作画。初期テレスペの馬面ルパンよりは、こういう作画の方が好きです。
そこそこ綺麗でよく動いていたと思います。
しかし、出崎演出ともいうべき止め絵の連発は、場面の勢いを止めてしまっていると思います。
2分割画面の演出手法もそうですが、「ここぞ!」という見せ場にだけ厳選して使用した方が、画面的にも物語の展開的にも見せ場が出来るのではないでしょうか。

【アクション】
アクションシーンは多く、それなりの動きを見せています。
しかし、物語の展開上、特に意味のないアクションシーンの連発は視聴者の「飽き」を誘います。
ラスト、不二子にキスされて、黄金の潜水艦から逃げ出そうとするラッセルを五右ェ門が突き落とすシーンは、良かったです。

【世界観】
オーソドックスなルパンワールド。
「テレスペのルパン」らしい世界観です。

【OP&ED】
本作のOPは、珍しくカーチェースではありません。
トランプでメインキャラ5人を紹介するという表現は楽しめました。セカンド80を彷彿とさせてくれます。
銭形警部は、ジョーカーで本人ではなく手錠の絵柄、というのが気が利いています。
ヘリの中で、ルパン・次元・五右ェ門が仲良くわいわいとしているシーンが見れたのが嬉しかったです。
ルパンと次元が五右ェ門をからかっている感じが伝わってきて楽しい。

【ゲスト】
アーチャー卿…「007」のモデルでもあるという元・英国諜報部員の老紳士。
しかし、女性を見る眼は無かったのか、あっさり不二子を秘書にしてしまっています…。
ルパン達を上手く使うなど、往時の凄みを見せてくれました。
ラストでは、大物同士ゆえか、ルパンとの間に友情も。
「ルパン、君とチェスがしたかった」というアーチャー卿は、まぎれもない英国紳士でした。
正直言って、ルパン達メイン5人よりも存在感があったような…。

ダイアナ…ルパンを出し抜いて「鷹の像」を盗むなどなかなかのやり手。
考古学の助教授で、文武に長けたゲストヒロインです。
ラスト、祖父が潜水艦とともに尽きようとしているのを、どうして止めなかったのでしょうか。
祖父の覚悟を思ってのことなのかもしれませんが、少し納得がいかない展開でした。

ラッセル…ロイドの顧問弁護士として登場した彼が、実はネオナチの総統だったというのは良かったです。
しかし、どうして、ホモオカマキャラだったんだろう?
しかもステレオタイプで、スタッフの認識の程度を疑う表現…。
非常に差別的で、2008年では無理な表現です。

【ルパン】
栗田貫一氏の第2作目になります。
第1作目は、劇場版「くたばれ!ノストラダムス」ですので、テレスペでは初登板。
冒頭あたりは、かなり忠実に山田ルパンを再現しているように思います。後半、少し息切れ気味だったのが惜しいです。
さて、「ルパン」に話は移ります。
大泥棒としては、いつもどおりのルパン。ダイアナに先を越される失態はあるものの、すぐに反撃を開始。
本作では、ラストに見せたアーチャー卿との友情が印象深いです。
ルパンが不二子よりもダイアナに興味がある様子だったのが、残念でなりません。

【次元】
次元は、基本的にどの作品でもブレがないのがいいですね。(例外は、テレスペ「セブンデイズ」でしょうか)
ルパンとの相棒ぶりは、視聴していて安心感があります。
そして、この安心感が次元の身上なのかなあとも思いました。

【五右ェ門】
時給980円で次元に雇われるってどうなんだ?
そもそも仲間なんだから、バイトも何もないだろうに。
五右ェ門がルパンや次元と行動を共にするのに理由が必要になってしまったのは、何時からなのでしょうか。
おそらく、テレスペ「バイリバ」からだと思うのですが…。
過去のTVシリーズや「マモー」「カリオストロ」で、ルパンや次元、不二子、時には銭形のために命を懸けて闘ってきた五右ェ門は一体どこへ行ってしまったんだろう…。
いつの間にか、テレスペでの五右ェ門と言えば「修行>仲間」、ひどい時は「女>修行>仲間」になってしまっています。

【不二子】
アーチャー卿の元へ、秘書として潜入。
「銃なんて持ったこともありません」と猫をかぶっていたものの、ネオナチには「すれている方」と認識されてしまいました。
…やつらは、どこで見抜いたんでしょうか?
ルパン達を裏切って、五右ェ門を引き連れてラッセルと組むなど、不二子イズムも発揮します。
ラスト、女性恐怖症のラッセルにキスをして、パニックにさせるシーンでは、女性性を豪胆に利用する不二子らしさが見られます。
ゲストヒロイン・ダイアナに食われることがなかったのが嬉しいです。

【銭形】
「ヘミングウェイ」「霧のエリューシヴ」ほどではありませんが、本作でも出番がある必要があるとは思えない扱いでした。
ドーバー海峡トンネル事故の中でも生き残って、泳いで渡英してきた根性はすごい。
カップラーメンネタは、やりすぎでくどいです。
もういいよ・・・と思っていたところ、カップめんの容器をリサイクルしたパラシュートで降りてきたときは、思わず噴出してしまいました。
ところで、「とっつぁんとカップラーメン」ってどの話が起源になっているんでしょうか。
2ndの「最後の差し入れはカップラーメン」なのか、「カリオストロ」のシーンなのか…。

【ル次五の仲間度】
五右ェ門を時給バイトとして雇っている時点で、仲間もへったくれもありません。
しかし、あちこちのシーンでル次五のスキンシップが見られたことが、わずかな救いです。
OPのヘリでゴエの口にトランプを押し込んでからかっている次元、ビルの清掃員に変装しているとき、ルパンが次元に「ほっぺぞりぞり」しているシーンなどなど。
スキンシップをとられている方が嫌がっているところが微笑ましいです。
スキンシップを取っている方は、相手が嫌がっていることも含めて楽しんでいることが伝わってきます。
しかし、本当に見たいのはうわべでの仲の良さではなく、仲間としての信頼関係と絆だったりするのですが…。

【総合】
ストーリー的に見せ場が無い作品。
「出崎ルパン」に共通して言えることですが、メイン5人のキャラクターの魅力と関係性が描かれていないことが致命的です。
特に、五右ェ門と銭形警部の描き方はなんとかならなかったのでしょうか。
同じくテレスペでは不遇になりがちな不二子が、本作では比較的良く描かれていたことは高評価。
OPの演出も楽しめました。

【出崎ルパン総括】
1989年ルパン三世テレビスペシャル第1作「バイリバ」以来、5作品に及ぶ「出崎ルパン」は本作で一旦終わります。
以降、2008年6月に至るまで、出崎氏は『ルパン』でメガホンを取っていません。

出崎ルパンは「テレスペ・ルパンのお約束」の数々を作り出しました。
1、ゲストヒロインを登場させる…「カリオストロ」のクラリスオマージュの少女ではなく、「バイリバ」のイザベルに代表される、ルパンさえ手玉に取る大人の女性。不 二子とキャラがかぶっているような気もしないではない…。
2、五右ェ門が「修行」を理由にルパン・次元と組みたがらず、別行動をとる。
3.しかし、そんな五右ェ門は女に騙されて(女を理由に)、お宝に絡んでくることも。
4、銭形警部は、いなくてもいいような扱い。
5、近代史・現代史の出来事をモチーフに使う…スリーメイソン(秘密結社フリーメイソンのパロディ)、ヘミングウェイ、ナポレオン、ロシア・ロマノフ王朝、ハリマオ。
6、ルパンの盗みのプロセス(いかに盗むか)は、描かない。
7、むしろ、「何を盗むか」が大事で、お宝に薀蓄をたっぷり持たせる。

他の「出崎ルパン」感想で何度も書いているように、管理人は「出崎ルパン」を高く評価していません。
「出崎ルパン」は、ストーリーとゲストキャラに拘りすぎで、メイン5人のキャラの魅力と関係性を描いていないことが最大の理由です。
管理人個人としては、出崎氏の作品が嫌いだと言うわけではありません。
OVA「出崎ブラックジャック」が大好きで、手塚治虫氏原作とは異なる表現で、『ブラックジャック』という作品の魅力を引き出した点を評価しています。
思うに、出崎氏は、「キャラ立ち」が重要な作品は、あまり得意ではないのかもしれません。
OVA『BJ』も、ブラックジャックやピノコのキャラクター性よりも、『ブラックジャック』という生と死を主題にした物語が内包しているドラマ性を、上手く引き出した作品でした。
結果として、賛否両論であるものの、「出崎BJ」は、一定以上の評価がなされている作品となっています。
しかし、『ルパン』は「キャラ立ち」が命の作品です。
「出崎ルパン」は、舞台設定やお宝の薀蓄は豪華です。そして、その設定にルパン達を放り込んでおしまいになってしまっています。
物語やゲストキャラの背景に凝ることよりも、その舞台で活躍するルパン達を、いかに魅力的に描くかということが重要なのではないでしょうか。

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