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STORY 119

  ルパンを殺したルパン

更新日:2008年6月23日


本作の最大の見所は、ルパンと不二子のファースト・コンタクト。

【ルパンvsルパン】
2nd第65話「ルパンを殺したルパン」は、敵(ミスターX)がルパンの姿をしていただけでしたが、
本作では、ルパンと全く同じ能力を持つ変身人形が相手。
しかも本体が考えていることまで分かってしまうという恐ろしい機能付。
本作では、ルパンはまさに「自分自身」と闘うことになります。

【なだれの中に消える札束】
舞台はストックホルム。銀行強盗に勤しむルパンファミリー。
盗んだ札束入りの袋をクッションにして飛び降りるアイデアは上手いですね。
帰りの自動車の中で、大はしゃぎのルパン。
そんなルパンを、「勝って兜の緒を締めよ」とゴエがたしなめます。
ちなみに、ゴエはいつも勝利に浮かれるルパンをたしなめる役回り。「ブラックパンサー」「スケートボード殺人事件」などなど。
生真面目な弟が、お調子者の兄貴を大人ぶってたしなめているようで微笑ましいシーンです。
そんな五右ェ門の言葉も、どこ吹く風のルパン。
「俺ってば、うぬぼれるのが好きなんですね。世の中に俺達に敵うヤツが誰かいらっしゃいますかね」
そこで、自動車を運転していた不二子が急ブレーキ。
不二子「人を轢いちゃったみたい」
ルパン「人?!」と驚きます。
驚くんですねえ。大泥棒とは言え、交通事故に関しては一般人並の倫理観の持ち主なのがいいです。
しかし、それは不二子の罠。ル次五を車から降ろして、自分がお宝独り占めしようとします。
それを追いかける3人。どこからアルファロメオを出したんでしょうか?
「なだれ危険」の標識を見たルパンは、裏切った不二子を案じます。
ルパン「不二子、止まれー!そっちは危ないぞー!」
何者かが、吊り橋のロープを切り落とし、なだれが不二子の乗っている自動車を巻き込んでしまいました…。

【不二子、最期の言葉?】
病院へ搬送された不二子。冷や汗を流しなら、ベッドの不二子を見守るルパン。深刻な表情です。
不二子「ルパン、あなたと二人きりでお話したいわ」
うなずき、席をはずす医者と次元、五右ェ門。
次元もゴエもなんだかんだ言って、ルパンと不二子の絆を分かっていてくれるんだなあと嬉しくなるシーン。
不二子「ルパン、ごめんなさい。私って悪い女だったわ」
ルパン「いくら裏切ってもいい。生きていてくれ」
こんなセリフが吐けるルパンは、本当にいい男です。
そして、そんなセリフが言えるくらい不二子に惚れたルパンは幸せ者かもしれません。
もちろん、そんなセリフを言ってもらえる不二子は、掛け値なしの幸せ者です。
不二子「あなたの一番大切なものがどこに隠してあったのか教えて」
そこで、驚き、口ごもるルパン。そんなルパンを見て、自分はその程度の愛情と信頼しかもらえない愚かな女だと悲しみます。
そんな不二子にほだされて、お宝の場所を教えるルパン。この状況では当然の選択でしょう。
そして「花の香りに包まれて死にたい」と香水のビンをルパンに渡して息を引き取る不二子…。
ルパンが、不二子の死に男泣きします。

【シャンパンと福神漬け】
教会での不二子の葬式。どうやら参列者はルパン、次元、ゴエのみだった様子。
教会の前を通りかかる銭形警部が鼻をひくつかせます。
「シャンパンと福神漬けの入り混じった、あのルパンの匂い」…どんな匂いなんだ!
シャンパンはセレブで、福神漬け=カレーは庶民的とすると、ルパンは「庶民なセレブ」ということなのでしょうか。

【裏切りは女のアクセサリー】
骨壷の前で打ちひしがれているルパンを逮捕する銭形。
あっさり手錠をかけられたルパンを見て、不審がります。(というか、寂しがります)
次元「無駄だ。今のルパンは腑抜け同然」
まだ、ルパンは不二子の死から立ち直れていません。
「不二子が死んだ」と聞いて大笑いをする銭形。
それを見て、怒りの表情を浮かべるルパン。ルパンの不二子への愛が伝わる隠れた名シーン。
「何がおかしい」と銭形警部につかみかかります。
銭形警部いわく、「飛行場で不二子を見た」とのこと。
ヘルガーという科学者崩れの悪党(元・ナチ党員)と腕を組んでタラップをあがる不二子…。
ルパンの純情を返してあげてください。
そして、とっつぁんも、不二子は逮捕しなくていいんでしょうか。

【不二子は本当に死んだのか?】
しかし、不二子は先ほど火葬したばかりだ、と銭形の言葉を受け入れられない様子のルパン。
…ところで、ストックホルムで火葬する習慣があるのでしょうか。火葬場自体存在するのでしょうか。
そういえば「とっつぁんのいない日」もパリで火葬場がありましたっけ。
キリスト教圏では、土葬を習慣とする地が多いはずですが…。
閑話休題。
そこで、銭形が「不二子にこんなものがはえているのか」と骨壷からトナカイの角を出します。
なんで、トナカイ?舞台がストックホルムだったのは、なだれの演出だけでなくトナカイの角を出したかったから?
他の動物の骨よりは、角突きの動物の骨を出すことで、
人間の骨ではない=不二子の死は偽装ということを、コミカルにわかりやすく演出しているのでしょうか。
医者=ヘルガーと組んで仮死剤を打ち、ルパンからお宝の場所を聞き出したわけです。
不二子にまんまと騙されたことを知って、怒り心頭のルパン達。
ルパン「祭りだ!」
銭形「何の祭りだ?」
次元「不二子の血祭りよ!」といって、不二子の遺影を撃ちぬきます。
テンポのいいシーンです。

【強欲ヘルガー】
さて、不二子はヘルガーとともに、船でクレタ島に向かっていました。
分け前は、ヘルガー9割。不二子1割。もちろん、不二子は異議を唱えます。
しかし、ヘルガーの部下2人に銃を突きつけられてしまい、一旦要求をのまざるを得ませんでした。

【ルパンと不二子、二人の愛の複雑さ】
ルパンのお宝は2000年前のクレタ島文明の遺跡に保管されているとのこと。
しかし、それはルパンのダミー情報。不二子に対しての予防線だったわけです。
それでは何が保管されているのか?というと、
ルパン「不二子が見たら、いっぺんでしびれて俺に惚れちゃう物」
ルパン「あの高慢ちきな不二子を30分以内に俺に惚れさせる。それが一番の仕返しさ」
ここは2つのつっこみどころ。
30分以内…番組終了までってことですね。つまりメタセリフ。
そして、「惚れさせるのが仕返し」ってことは、どういうこと?
不二子にとってルパンに惚れるのは仕返し=ネガティブなことなのでしょうか。そしてルパンは、そのことを自覚している?
いやいやいや。
「ルパンに惚れること」が仕返しなんではなくて、「お高い不二子が我を忘れるくらいメロメロになること」が仕返しなんですよね。
と、思っておきます。寂しすぎるから。

【変身人形・ミノタウロス】
ルパンのお宝金庫の横に置かれたミノタウロスを見て、恐怖におののくヘルガー。
不二子に宝は全部譲るといって、逃げ出してしまいます。
不二子が金庫を開けようとすると、ミノタウロスが不二子の姿に変身します。
不二子vs不二子。本物不二子のピンチ!
そこにル次五が登場します。
変身人形ミノタウロス…このエセっぽさがセカンドならではの道具たて。
光線を浴びた人間と同じ姿・能力を持つという仕掛け。しっぽが目印です。
考えていることもお見通し。ルパンに不二子の考えていることを告げ口します。
ナチスのヒトラーが護身用に作ったものだとのこと。
バッグに流れるヒトラーの演説は本物です。2nd第3話「ヒトラーの遺産」でも本物の演説が使われていました。
こういう音響演出が、「ルパン」世界に深みを与えます。
ルパンの金庫の番人にした理由は「誰だって、自分を相手にしちゃ敵わない」
手動操作器は、ルパンのタイピンになっています。
ルパンのタイピンっていろんな機能が搭載されていますね。一度一覧を作ってみようかな。

【ルパンと不二子の出会い】
ルパンの大切なものとは何か…それは「僕らが初めて会ったときに関係のあるものでーす」
回想が始まります…舞台はアテネのパルテノン神殿。
首飾りを盗み、逃げてきたルパン。雨が降り出してきました。
そこに通りかかった、一台の車。グラマラスな美女が「お乗りなさいな」と声をかけてきます。
もちろん、その美女は不二子。
喜んで乗せてもらうルパン。声が少し若くていい男で、山田さんのプロ意識を感じます。
しかし、パトカーで銭形警部が追ってきました。
不二子「あなた、警察に追われているの?」
ルパン「迷惑はかけません」といい、降りようとするルパン。不二子を巻き込まないようにしようとするルパンがいいですね。
不二子「降りなくってもいいのよ」と、急発進させ、パトカーを振り切る不二子。いい女です。
いい男といい女の、ロマンチックで素敵な出会い。
古き良き名画のようなシーンを、ピアノソロのBGMがさらに印象付けます。

【最も恐ろしい敵は自分自身】
さて、舞台は現在のミノタウロス神殿に戻ります。
ニセモノとすりかえられた不二子は、ヘルガーの人質になってしまいました。
ヘルガーの船は機関銃だらけで、迂闊には近づけません。
そこで、ルパンのモグラヘリの出番です。ヘリだけど、地下をドリルでもぐることが出来るという仕様。
しかし、ヘルガーに電波障害をおこされて、モグラヘリの計器に異常が発生。
ヘルガーの船に激突させて沈没させる作戦でしたが、なんと神殿に出てしまいました。
しかも、金庫のダイヤルにドリルの先端が触れてしまい、金庫の番をしていたミノタウロスがル次五の三人に変身してしまいます。

ルパン vs ルパン→格闘戦から銃撃戦へ
次元 vs 次元→本物が銃を弾かれてしまい、殴り合いに。銃撃戦だったら即相打ちでしたね…。
ゴエ vs ゴエ→空中を飛び交いながら剣で戦います。動きがダイナミックで一番かっこよかったです。

ルパンは、タイピンを取られてしまい、手 動で制御できなくなってしまいます。
本物とニセモノの戦いは、三組とも膠着状態。
そして、次元と五右ェ門はそれぞれニセモノと取っ組み合いながら、崖から海に落ちてしまいます。
そのとき、「次元!五右ェ門!」と仲間を思って叫ぶルパン。仲間思いな彼の良さが伝わってきます。
結局、ルパンもニセモノに腕をとられて海中に落ちてしまいました。

【ルパンのお宝】
ヘルガーが金庫をあけると、そこには香水瓶が1本。不二子愛用の香水瓶だそうです
香水瓶の中にはただの水が入っているだけ。
不思議がるヘルガー達。そこへ、ヘルガー三人組と同じ姿の三人組が現れ、海中に本物ヘルガー一味を落とします。
もちろん、この三人組はルパン、次元、五右ェ門の我らが愛すべきトリオ。
さて、なぜルパン達が助かったかというと、ルパンいわく「ニセモノも本物の俺と同じでドジだった」
ニセモノがしっぽを海蛇に噛まれてしまい、痛がっている隙にタイピンを奪い返し、事なきを得たのです。
「お主らももう少し謙虚になれ」と、浮き輪をヘルガー達になげる五右ェ門。
無駄な殺生をせず、懲らしめたら命だけは助けてやります。
2nd118話「南十字星がダイヤに見えた」でも、ゴエは悪人を鮫プールから手を貸して助けてやっていましたね。

【香水瓶の秘密】
さて、不二子にルパンが香水瓶の中の種明かしをします。
この水は、二人が初めて会ったときの雨水。
ルパン「君との最初の思い出を、大切にしているのさ」
もちろん、不二子はメロメロ。「キスしてもいいわ」
そんな二人を見て、ゴエ「しかし、信じられん。ルパンにあんなセンチな面があったとは」
確かに、次元や五右ェ門はセンチ、というかロマンを大切にしますが、合理主義者・ルパンとしては意外な側面。
この五右ェ門の相棒への洞察は間違っていなかったのです・・・。
そこへ、ミノタウロスが偽ルパンになって海から上がってきて、実は水は雨水ではなく防火用水であることをばらします。
「これでうまく不二子をひっかけられそうだぞ」と、余計なことをペラペラと話す偽ルパン。
不二子はルパンをひっぱたき、お怒りの様子。
ルパンは、お邪魔虫のミノタウロスを海に再度投げ落としました。

【ルパンの嘘、不二子の裏切り、二人の愛】
不二子の死が偽装工作であることも、ルパンは承知の上で嘘をついたのでしょうか。
しかし、あの不二子の死への悲しみぶりは芝居とも思えません。
ルパンは確かに変装の名人で、芝居も得意ですが…。
香水瓶を金庫に保管していたのは、いつか機会があればこのネタで不二子を口説こうと思っていたのを、今回使う羽目になっただけかもしれませんし。
管理人が思うに、ルパンにとって「一番大切なモノ」は存在しないのではないでしょうか。
ルパンが大切なものは「モノ」ではなく、「自由」「誇り」「楽しいこと」「未来」といった、形にはならないモノ。
ですから、不二子の死が本当の死であっても、そもそも存在しないモノの場所を言うことはできません。
しかし、ルパンとは正反対の物的思考の不二子に、そんな観念的な話をしても理解してくれない可能性もあります。
不二子は「粋」を理解できる女性で、ただのゴリゴリの物欲主義者ではありませんが、ルパンほど「モノ」から自由になってはいません。
そこで、嘘でも「大切なモノの場所を教える」という形をとることで、今際の不二子に「愛している」ということを伝えようとしたのかもしれません。

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