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STORY 77

  星占いでルパンを逮捕

更新日:2008年7月22日


「ルパン逮捕作戦」ネタの一作。このネタは、「逮捕頂上作戦」「 ハイウェイ作戦」と傑作ぞろいです。
その中では、本作は出来のいい作品とはいえないかもしれませんが、ル次五のアジトライフが垣間見られるところが嬉しいです。

【ICPOマル秘アストロジー作戦】
女予言者・マリアンヌの占いによるルパン逮捕作戦。マリアンヌは、大人の色香漂う妖艶な美女。
ちなみに、マリアンヌの占いに、銭形警部の活躍も映し出されていたとのこと。
「必ず最後にルパンを逃がし、悔しがって地団太を踏む」…そのとおりなんですけどね。ちょっと警部がお気の毒です。

【ルパンのアジト】
アジトにて。洋風の居間でくつろぐル次五。
こういう日常シーンが観られるのが、TVシリーズのよいところです。
長ソファに寝そべってタバコをふかすルパン。
ソファの上で胡坐をかいて座っているゴエ。
新聞を読む次元、マリアンヌのことを美人と評します。
「女嫌いで売り出し中」(「花吹雪謎の五人衆」)の癖に、美人は美人というところが次元の次元たる所以な気がします。
胸騒ぎがするという五右ェ門。
「10日間練りに練った計画」だそうですけど、10日間で練りに練ったんなら、10年かけたとっつぁんの逮捕頂上作戦はどうなるんだ。
筮竹占いをするゴエ。女難の相が出ているらしいです。
そんなの、いっつものことじゃないですか。三人ともね。
占いというより、過去の蓄積データから導きだされた予測という感じがしますが。

【ルパンは「予言」を信じるか】
ルパン「予言なんて非科学的なもの、このルパン様には通用しない」
ルパンは、徹底した合理主義者なので、こんな調子でいなします。
予言、占いや幽霊など、非科学的とされる超常現象に関してのル次五のスタンスの違いは、ファンの間で良く知られています。
さらっとおさらいをしておくと、

ルパン:一切信じない合理主義者。
     ただし、ツタンカーメンには取り付かれたことがあり(「ツタンカーメン三千年の呪い」)、その件はトラウマになっています(「第4次元の魔女」) 。
五右ェ門:ルパンファミリーの超常現象担当。
      占いもこなすし、幽霊との霊力対決でも勝利しました(「マダムXの不思議な世界」)。
      ルパンの科学的合理主義とは対照的な立場。
      ルパンが西洋・合理主義・科学を代表するとすれば、ゴエは、日本(東洋)・自然主義・神秘を代表する立場といえます。
      ところで、このルパンとゴエの対象性は、キャラ立ちという点ではわかりやすいですが、オリエンタリズム(※1)に満ちているとも言えます。
      1978年~1980年放映のアニメに、オリエンタリズムも何もないかもしれませんが…。
次元:ルパンとゴエの中間的立場。
    ゴエほど占いや幽霊に詳しいわけでもないし、能力的に長けているわけでもないが、ルパンほど「そんなものは存在しない」と割り切れない。
    いわゆる「一般人」の感覚に近い立場。
    超常現象に関することだけでなく、次元はルパン一味(不二子・銭形も含む)の中で「一般人=視聴者」の代弁者的立場をとることが多いです。
    ルパンの無茶やゴエの突飛な行動に対して「ツッコミ」を入れる役割を果たしています。

私事で恐縮ですが、管理人はルパン的立場です。占 いの類は信じません。超常現象も信じません。
アニメやマンガで取り上げられる限りでは楽しんでいますが…。

【エメラルドの秘宝】
エメラルドの秘宝「ポセイドンの炎」、ダンマル共和国の王位継承の証だそうです。
奪取計画、知っているのはル次五のみで、不二子も知らないとのこと。
しかし、持ち主であるダンマル共和国のガブリエル国王の側に、ちゃっかりと潜入している不二子。
ウェイトレスに変装しています。ぱっつん前髪が可愛いなあ。
「ルパンはどんな方法でもぐりこむつもりかしら」と、ルパンが「ポセイドンの炎」を狙っていることもすっかり承知の様子。
ガブリエル国王は典型的な成金として描かれています。
とはいえ、この国王、ただの暗愚な王様ではなかったのですが…。

【ルパン逮捕星占い作戦】
マリアンヌがルパンのホロスコープを取り出します。
その結果が、水晶に映し出されるとのこと。まどろっこしい占い方だなあ、と思いますが、実はコレはダミー。
ちなみに、管理人では、画面に映ったホロスコープで何座を指しているのかわかりません。占いに詳しい方なら、ルパンが何座かわかるのでしょうか。
っていうか、ルパンは自分の誕生日を知らないんじゃなかったっけ?(原作新ル最終話)
とはいえ、実は占いではなく、マリアンヌの超能力だったわけです。
そう考えると、ルパンの誕生日は知らなくて、でたらめなホロスコープでも問題はなかったんでしょうが。

狙いが「ポセイドンの炎」であることが分かり、銭形は国王の元へ向かいます。
お金をあげるから守ってくれ、という国王。
それに対し、「私は卑しくも警官ですぞ」と怒る銭形。かっこいいですね。
国王の入浴中の風呂場に忍び込んでいるルパン。
首尾よく国王からお宝を奪取し、バルーンで逃走します。
しかし、マリアンヌが放った鳥(ハトのような形状です)が、バルーンを突っつき、ルパンは落下。
手際よく、次元がお宝を回収します。
ルパンはプールに落下します。地面じゃなくてよかったねえ。
ルパン「前畑がんばれ、前畑がんばれ、古いかな?」って、2008年でこのネタが分かる若い世代はどれだけいるんだろう。
それとも、歴史(!?)の授業で知っているんでしょうか。
あっさりと、銭形の投げ手錠でルパンは逮捕されてしまいました…。

【再びルパンアジトにて】
「ポセイドンの炎」を手にすることは出来たけど、ルパンが銭形に逮捕されてしまったことについて、次元とゴエが話し合っています。
そこへ、マリアンヌの鳥がやってきて、五右ェ門が操られてしまいました。(…操られやすいなあ、ゴエ)
目が白目になってしまい、いかにも「操られています」モード。
ゴエ「ルパンのやつ自業自得だ」
次元「ルパンを見捨てるのか!」と怒りを露にします。
ゴエ「縁がなかったということだ」
次元「おめえってやつは、見損なったぞ」…仲間が大事はルパンファミリーの最重要事項なんですね。
ゴエ「ポセイドンの炎は、拙者が戴いてゆく」
そして、テーブルごと次元のマグナムを斬るゴエ。
あっさりやられてしまう次元ですが、ここは不意を突かれたからでしょうね。
ゴエは、ドアも斬って出て行きます…開けた方が楽だし早いのでは?
信じられねえ、どうなってんだとゴエの後をつける次元。
みえみえの尾行ですが、操られたゴエは気づく様子もありません。
相変わらず次元は苦労人です。

【マリアンヌの甘い罠】
場面は変わって銭形サイド。「マリアンヌ様」と呼ぶ銭形警部。
ルパンを逮捕できたので、すっかりマリアンヌの占いの腕に心酔している様子。
このあたりの単純さというか現金さは、とっつぁんらしいのかもしれません。
マリアンヌの指示に従い、ルパンを護送することになりました。
東京→北海道行きの飛行機にのるルパンと銭形。
ルパンいわく「俺はこのまま網走に移送されて死刑になる。だからマリアンヌちゃんの占いの方法を教えてくれ」と銭形にたずねます。
銭形から、マリアンヌの方法を聞き、何か思うところがあるらしいルパン。
そこへ、パイロットに変装したゴエがやってきて、ルパンを逃がします。
ルパン「待ってました!五右ェ門」
どうせ次元かゴエが助けにくるから、ルパンは飄々としていられたのでしょうね。
しかし、このゴエはマリアンヌに操られた状態なのです…。

【大泥棒とサムライ】
マリアンヌが望遠鏡で、ルパンと五右ェ門の様子を伺っています。
管理人的に、この時のル五が二人でいるシーンが大好きです。
ルパンはペラペラと話していて、その横でゴエは黙って目を閉じて座っています。
ルパンはゴエが無言なのも意に介さず、調子よくおしゃべり。
そんなルパンのおしゃべりを、黙って聞いている五右ェ門。
コミュニケーションが成立していないようにも見えるけど、お調子者でおしゃべりなルパンと無口なゴエにとっては、これが二人のやり方なのでしょう。
この二人って、普段からこんな感じなのかなあと思わせてくれます。
次元が加わると、ルパンと次元の漫才が始まって、そこにボソッとゴエが突っ込みを入れるんでしょうね。

ゴエ「拙者は今日限りでおぬし達と別れることにした。ポ セイドンの炎はコンビ解散記念に、拙者がいただくことにする」
操られていることを前提にしても、いろんな意味で突っ込みどころ満載なセリフ。
まず、「コンビ」ってルパン・次元・ゴエで「トリオ」なのでは?
そして、「解散記念」って芸人グループではあるまいに。
そもそも、解散記念の品を自分だけがいただけると思っているあたり、どうなのよと。
ルパン「どうしちゃったの、お前。目がつりあがってるよ」
ということは、ルパンはゴエが正気ではないことに気づいていなかったのか。
ポセイドンの炎を持って逃げるルパン、追う五右ェ門。
操られているがゆえに本気で切りかかってくるゴエに対し、ゴエの行動が信じられないのか、逃げるだけのルパン。
ついに、ルパンは崖から転落してしまいます。
そこに駆けつけた次元「しまった。遅かったか」
ゴエも、目が黒く戻って、正気を取り戻した様子です。

【本物のお宝はどこに】
ルパンが海に転落したことを見届けたマリアンヌは、海底に潜り、お宝を回収します。
そこに登場するルパン。あんなことでルパンが死ぬわけないことくらい、銭形の逮捕劇を毎回予言していたのなら分かっていたでしょうに。
ルパンが「マリアンヌちゃん」と「ちゃん」づけで呼ぶところが、ルパンの女好きと敵に対する余裕を感じさせます。
しかし、マリアンヌは動じず「最後の予言を忘れていたわ。ルパンが私を愛するっていう予言を」
緊迫した空気は一瞬で吹っ飛び、メロリン・ルパンはマリアンヌに抱きつき、キスしようとします。
もちろん、マリアンヌはその隙にルパンの命を狙おうとします…。
そこに次元&ゴエが登場。ルパンのピンチを救い、マリアンヌの「占い」の種明かし。
鳥は、マリアンヌの念力を受信する装置。水晶は、マリアンヌの念力を発信する装置。
なんじゃ、そらー!とは言いっこなしです。これがセカンドルパンの世界です。
銭形警部が登場し、ルパンに手錠をかけようとするとポセイドンの炎が落下、割れてしまいます…。
どうやら、ルパン達が必死で取り合っていたお宝はニセモノだったようです。

【ポセイドンの炎は誰のもの】
飛行機の中でくつろぐガブリエル国王と不二子。不二子は上手く国王の懐にもぐりこんだ様子です。
不二子「私を第3夫人にするって本当?」
国王「ポセイドンの炎に触れないと約束するならね、峰不二子君」
国王は、ルパン達や不二子のたくらみを見抜いていたとのこと。
なぜ、見抜けたのか?「我が共和国の国営放送でもルパン三世は放送されている」…メタなネタ落ちです。
暗愚な成金に見せかけて、なかなか食えない王様だったようで、今回はルパンも不二子もマリアンヌも国王に負けました。
一方、ルパンはマリアンヌを追いかけています。
次元「おーい、ルパン、不二子はいいのか」
ルパン「俺、今からマリアンヌちゃんにプロポーズするんだもんね」
次元「五右ェ門、お前の占いどおりだったな、女難の相が出ているって」
やはり、それは「占い」ではなく、蓄積されたデータに基づく予測なのではないでしょうか…。

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※1オリエンタリズムとは、パレスチナ出身のアメリカの批評家・エドワード・サイードが提唱した現代思想の概念です。
西洋社会が所有しない・理解できない「異質なもの」を「東洋」に付与してきた姿勢を「オリエンタリズム」と呼びました。
サイードが『オリエンタリズム』を著したのが1978年、『ルパン三世 2ndシリーズ』が1977年~1980年放映、ということを考慮すると、
『ルパン』がオリエンタリズムな価値観を有している点も致し方ないと言えるでしょう。
特に、『ルパン』作品には、原作、各TVシリーズ、劇場版を通じて、「西洋志向」が大きく位置づけられています。
主人公である「ルパン三世」自身が、フランス人であるアルセーヌ・ルパンの孫であり、相棒の次元大介はアメリカかぶれです。
ルパン達のアジトは、基本的に洋風の作りになっていますし、食生活もナイフとフォーク、ワインなど西洋式になっています。
このような「ルパン」世界の構築とキャラクター作りは、当時の日本における西洋への憧れが内包されていたのでしょうか。
その点を鑑みると、近年の「ルパン」関連作品では、五右ェ門だけでなく、ルパンも次元も日本式の生活様式をとっている姿が描かれていることは、「日本人における西洋」の位置づけが変化してきていることとリンクしているのかもしれません。
また、作中で頻繁に取り上げられる五右ェ門の「古典日本的生活への執着」の描き方も、オリエンタリズムの発露とも言えるでしょう。
カップラーメンなど、生活感というよりも貧乏感が漂う描写は、宮崎駿氏へのオマージュでしょうが。
しかし、宮崎氏が『ルパン三世』の世界に持ち込んだ生活感は、原作や他の映像化作品が持つ「西洋志向」へのアンチテーゼとしての意味もあったのかもしれません。
「ルパン」世界におけるオリエンタリズムとその脱却は、管理人としては一度取り組んでみたいテーマでもあります。

オリエンタリズムに関しては、以下のテキストが参考になります。興味のある方はぜひご一読ください。
『オリエンタリズム』エドワード・W・サイード/今沢紀子訳/平凡社ライブラリー/1978年
『オリエンタリズムの彼方へ―近代文化批判」姜 尚中/岩波現代文庫/2004年
『思考のフロンティア ポストコロニアル』小森陽一/岩波書店/2001年
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