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STORY 66

  射殺命令!!

更新日:2008年7月6日


「ルパン対殺し屋」ネタを扱った作品の中でも傑作の一つ。
1993年放映のテレスペ「ルパン暗殺指令」はコレを元ネタにしているようです。

【強敵との死闘】
セカンドシリーズでは、ルパンだけでなく、次元、五右ェ門も、それぞれ強敵との戦いをテーマにした話があります。
相棒が命をかけて闘うことになったとき、二人の相棒はそれぞれどのように振舞うのでしょうか。
ルパンの時の次元と五右ェ門。次元の時のルパンと五右ェ門。五右ェ門の時のルパンと次元。
強敵とのガチバトルだけに注目するのではなく、危機的状況における仲間の絆が描かれるのが、
この手の話の魅力の一つでもあります。

【ルパン三世専任捜査官・銭形警部】
ハワイでルパンの犯罪に関する演説を行うことになった銭形警部。
特別ゲスト、VIP扱いということで舞い上がるものの、自分がいない間にルパンが悪さをするからと拒否する警部。
すばらしいプロ意識です。
しかし、警視総監の命令で、すぐさまハワイに向かうことになりました。
実は、これは銭形をルパンの元から追い払う作戦。
ということは、警視総監やICPO上層部は銭がルパンを射殺することに反対することがわかっていたのでしょうか。

【警察バッジをつけた殺し屋】
ICPOからルパン射殺命令。執行人はビューティー警部。
ワインを飲んで、銭形のハワイ行きを祝うル次五不の四人。ラベルを見る限り、ロマネ・コンティなんでしょうか。
そこへ乱入するビューティー。木や温室を壊して自動車を運転する迷惑な人です。
警察官なら、市民の身体と財産の安全を守ることを優先していただきたい。
ちなみに「ビューティー」はダーティ・ハリーのもじり。
ルパン「ビューティーだろうが、ダーティーだろうが」というセリフもあり、ファンをニヤリとさせます。
ルパン三世の声優・山田康雄氏が、クリント・イーストウッド演じるダーティー・ハリーの吹き替えを担当していたことは有名すぎるお話。
ルパンの命の危機に、不二子は「私と一緒に逃げよう」と誘います。
同じく、ルパンに逃げることを薦める次元。ビューティーは、次元の因縁の相手でもありました。
次元は6年前にNYでいっぱしの殺し屋をしており、そのとき命を狙われたことがあったのです。
そして、そのときはただ逃げるしかなかったと…。次元でさえ敵わなかった強敵です。

【仲間と誇りと】
夜のルパンアジト。
「敵う相手ではない。」と、ルパンに逃げることを薦める次元と五右ェ門。
自分の場合だったら絶対勝負に出るだろうに、相棒のこととなると必死でとめる二人。
(次元だったら「コンバット・マグナム」、ゴエなら「五右ェ門の復讐」あたりを思い返してみてください)
「逃げるのも作戦のうち。」という五右ェ門の考え方を、ルパンは嫌がります。
ルパンなら、相手と自分の戦力を客観的に分析して、状況に応じた対応をとるとも思うのですが、本作では玉砕も辞さない覚悟です。
ちょっとルパンらしからぬ冷静さに欠けた行動だとも思いますが、「誇り」を傷つけられることが耐えられなかったのでしょう。
そもそも、「諦めの悪い男」「不可能だからこそ挑戦する男」ですものね。
しかし、どうしてもルパンを引き止めたい次元は、ルパンを殴ります。
次元がこんなに真面目にルパンを殴るなんて!次元の本気さが伝わってきます。
ビューティーと過去に闘った次元は、ビューティーの恐ろしさをよくわかっていたのでしょう。
そして、「なぜルパンがビューティーに勝てないのか」その根拠を語ります。
銃の性能の違いによるもので、これは個人の能力でどうこうなるものではない、と諭す次元。
物静かなゴエは淡々と最低限の言葉で説得し、コミュニケーション力の高い次元は論理的に状況を分析して説得します。
次元と五右ェ門のルパンへの友情が際立つ名シーンです。

【銭形警部の人道主義】
アロハを着て演説する銭形警部。でもハットはかぶっているんですね。
銭形「ルパンの殺して逮捕するということは、捜査という名を借りた殺人に他ならないでしょう」
『殺人狂時代』のチャップリンのセリフを引用します。「一人殺せば殺人。大勢殺せば英雄」
本作での警部の出番はあまりありませんが、銭形警部の矜持が伝わってくるシーンが多いのが嬉しいです。

【そのとき四人は…】
そして、ハワイの銭形のところに助けを求めに来る不二子。
ルパン最大の危機には、やはり警部の助力が必要です。
そして、アジトでは眠り薬を飲まされてしまった次元と五右ェ門。暴睡しています。
そんな二人に詫びながら、一人行くビューティーとの闘いの場に赴くルパン。
ルパンとビューティーの闘いで起こった爆音で、二人は目を覚まします。
大慌てでルパンの後を追う次五コンビ。

【ルパン vs ビューティー】
ルパンとビューティーの闘いは、やはりビューティーの圧勝でした。
いよいよとどめを刺される、というルパンのピンチに登場、銭形と不二子。BGM銭形マーチが素敵です。
そして、不銭の乗る自動車の横に、次五が乗る自動車が走ります。
倒れるルパンのそばに駆け寄る不二子。
「夕日がしずむよ不二子。いつも誰かが夕日とともに沈んでいく。今日は俺さ」と、不二子の腕の中でくず折れるルパン…。
勝ち誇るビューティーに対して、異議を申し立てる銭形警部と、次元。
ビューティーはダムダム弾を使用。1929年ベルサイユ条約で警察は使用禁止した代物です。銭形が「ベルばら条約」というのは笑いどころ。
このとき、次元が小石を片手でもてあそびながら話します。
次元が何か思うところがあり、それを抑えようとしていることが伝わるよい演出です。
(「思うところ」の正体は、ルパンの死をギリギリ阻止できたことを、ビューティーにばれないようにという気持ち。
そして、卑怯な手を使って相棒の命を狙ったビューティーへの怒りでしょうか。)

【死んだふり作戦】
雨の中での埋葬。お墓は十字架。
やはり、ルパンはクリスチャンなんでしょうか。「ルパン=無神論者説」を推したい管理人としては気になるところです。
しかし、これはあくまで「お墓」の記号としての十字架なのかもしれません。
和風の墓地では、今回の物語のハードボイルドな世界観にそぐわないので、十字架のお墓を使用しただけとも考えられます。
埋葬には、次元(トレンチ)不二子(トレンチ)ゴエ(普段どおり)が参列。
ゴエが和傘をさしていて、不二子と相合傘をしています。なんだかんだ言って、不二子には優しい五右ェ門。
部屋に3人が戻ると、包帯でぐるぐる巻きルパンがいました。
しかし、「どうして俺の葬式なんかするんだ」と怒っているから、死んだふり作戦は次元か不二子発案なんでしょうか?
「ルパンは二度死ぬ」では「死んだふり作戦」を活用し、敵を返り討ちに合わせたルパンとしては、少し余裕がないようです。
ルパンが無事だったのは、ビューティーのダムダム弾より、次元が接着弾を一瞬早く撃ったから。
その時の回想シーンでは、銃を咥えながら運転している次元が見られます。
器用だなあって、隣に座っているゴエ、運転してあげて…。
こんな非常事態でも運転しない五右ェ門のキャラを、管理人は嫌いではありません。

【ルパン一味の反撃開始】
ルパンが生きていることを知り、怯えるビューティーに「勝手に探せ」と銭形警部。
銭形「今度は貴様がルパン達に狙われる番だ」と突き放します。
そして、そこを狙撃する次元。しかし、それは次元がビューティーに狙われることにもなるわけです。
では、どうやってビューティーを殺すのか?
不二子「早くしないと次元が殺されちゃう」
普段、あまり仲のよろしくない次元と不二子ですが、ここでは次元を心配している不二子が見られます。
とにかく本作では、ルパンファミリー(とっつぁん含めて)が、お互いを思いやり信頼しあっているのが嬉しいです。
「ルパンのピンチ」に結集する彼らの絆が描かれています。

【我が心のパパ・ヘミングウェイ】
ルパンは文学青年。
アーネスト・ヘミングウェイといえば、ハードボイルド小説を文学にしたノーベル賞作家(※1)です。
ハードボイルドな世界が好きなルパンらしい趣味ですね。
ヘミングウェイが作品の中で取り上げた水銀弾を使おうとします。
巨象さえも一発で倒してしまうという危険な代物。
そのために体温計を割って、中に入っている水銀を取り出してくれと、ゴエと不二子に頼みます。
水銀弾の調合の割合を知っているのか、とたずねるゴエ。
「知らない。失敗すればこっちが木っ端微塵」というルパンに、冷や汗をかくゴエと不二子の二人。
「心配ない心配ないって」と言って、こちらも汗をかくルパン。
しかし、他にビューティーを倒す手立てがないのです。
次元のためにも早く水銀弾を用意するしかありません…。

【夢の島でルパンは笑う】
次元とビューティーは夢の島で対峙していました。
次元はついにビューティーの欠点である「片手打ちできない」ということを見破ります。
しかし、撃たれてしまいました!本当にピンチです。
そこに、駆けつけるル五不の3人。勢いあまって頭から次元の側に落ちるルパン。相変わらず全身包帯だらけです。
水銀弾を次元に渡して、次元の射撃に肩を貸すルパン。次元だけにリスクを負わせません。
そして、次元の発射した水銀弾で、ビューティーが木っ端微塵になりました。なんとか勝利したルパン達。
ビューティーのむごい死を見て気絶してしまった不二子を、困った様子で五右ェ門がだっこしています。
そんなゴエに怒るルパン。「ずるいぞ!俺がやりたいんだから!」
いつもの平和なルパン達に戻ったようです。

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※1ヘミングウェイとハードボイルド小説については、
小野俊太郎「ハードボイルドの技法」(『男女という制度』斉藤美奈子編/2001年/岩波書店所収)に詳しいです。
ルパン三世PARTⅢ、および長編作品の脚本を担当する柏原寛司氏は「ヘミングウェイが好きである」と、出崎統氏、加藤敏氏との対談で語っています。(「ルパンはやっぱりワルがよく似合う」『キネマ旬報増刊 THEルパン三世FILES~増補改訂版』所収/1998年/キネマ旬報社)
そして、テレスペにも「ヘミングウェイ・ペーパーの謎」と、ヘミングウェイの名を冠した作品があります(脚本は柏原氏)。
「ルパン」世界とヘミングウェイ作品との関連は考察する意義があるのかもしれません。
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