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STORY 57

  コンピューターかルパンか

更新日:2008年6月8日


「ルパン対コンピュータ」ネタを扱った作品。
ストーリー展開とキャラクターの魅力とも楽しめる良作です。

【ルパン vs コンピュータ】
『ルパン』シリーズでは定番ネタの一つです。
1st「先手必勝コンピューター作戦! 」、テレスペ「バイバイリバティー危機一発!」でも扱われています。
「ルパン対コンピュータ」を描いたものでは、本作が一番よく出来ていたと思います。
コンピュータの完璧に秩序だった思考と情報力に対抗するに当たって、そのコンピュータの管理者(本作ではハンター教授)の感情面を揺さぶり勝利するという展開は、ルパ
ンの柔軟な思考力を上手く表現しています。

【銭形警部がルパン一味に】
また、本作の見どころは、ルパンの思考力だけではありません。
なんと、銭形警部がルパン一味に加わるのです。
この顛末だけでも一本の長編作品が作れそうな話です。
ルパンと銭形のとっつぁんのデコボココンビの魅力を存分にお楽しみください。

【ハンター教授のコレクション・銭形親分の投銭】
舞台はハワイ・ホノルル空港。
犯罪心理学の天才・ハンター教授の基地は飛行機になっています。
通路の組み合わせで出口のない迷路にもなる構造。
コンピュータがその組み合わせを決定する、というシステム。
この組み合わせを解き明かすことは、たとえルパンでも無理とのこと。
そして、教授のコレクションが収蔵されている金庫を開けられるのは教授だけ(というか、教授の指紋だけ)という完全防壁。
しかし、ぱっと見る限り、あまり趣味のよいコレクションではなさそうです…。
コレクションの中には、とっつぁんのご先祖様・銭形平次親分の一文銭がありました。
それを見つけた銭形警部、なんとポケットに入れてしまいます!
どうしてとっつぁん、盗っちゃったの?
銭形「おとりに卑怯な」って、あんたが勝手に取ったんでしょうが。

【ルパンファミリー vs 銭形警部】
ハワイでバカンスを満喫中のルパンと次元。
「車が一台こちらに向かっている」とゴエから無線(?)で連絡が入ります。
中継映像には、自動車を全速力で運転する銭形警部の姿が。
銭形警部はスピード恐怖性らしいです(by次元)。
たまに登場する最強銭形警部が見られるのも、本作の嬉しいところです。
(2nd「ルパン一世の秘宝を探せ」でも銭形警部の勇姿をみることができます。)

先峰・石川五右ェ門vs銭形警部。
あっさりと手錠をかけられる五右ェ門。汗をかいて目をパチクリしているゴエは珍しい。
一部始終を通信映像でみていた次元は、「まさかそんな馬鹿な」と小型TVをたたきつけます。

中堅・次元大介vs銭形警部。
銭形警部の見事なガン裁きで、マグナムを弾かれ、完全に遊ばれます。
「夢に違いない」と銭形のほっぺをつねる次元…お約束とは言え、自分のほっぺをつねりなさい。

大将・ルパン三世vs銭形警部。
次元とゴエに向かって「みっともねえ」というルパンに、次五が口をふさがれつつ「後ろ、後ろ」と言っているのがかわいい。
小林さんと井上さんの演技がいいですねえ。
もちろん、あっさりと銭形に後ろを取られ、ルパンも銭形警部の手に落ちます。

【昨日の敵は今日の友】
泥棒になりたいという銭形警部。
驚く3人に、ハンター教授のコレクションにある銭形親分の投げ銭を取り返したい、そのためには泥棒になるしかない、と訴えます。
「投げ銭は一文銭と聞く」とゴエ。さすが歴史(特に日本史)関係には詳しいですね。
ところで、どうして銭形警部は「取り戻したい」と嘘ついたのでしょう?
やはり現職警官である以上、泥棒相手に「盗んでしまった」とは言えないのかもしれません。
そのあたりの微妙な感情は理解できなくはありませんが、最初から正直に言えば良かったのにとも思います。
妙なプライドに邪魔されているあたりがとっつぁんらしくないような、しかし、そんなところがとっつぁんの人間味を感じさせるような…。
いずれにせよ、ここでとっつぁんが既に一文銭を盗んでいることをルパンたちに伝えなかったことが伏線になります。

【不可能に挑戦する男・ルパン三世】
ハンター教授の研究所=飛行機の地図…すごいプリミティヴな地図です。
これでみんな分かるの?子どもの落書きみたいな地図ですけど。
5人が覗き込んでいる図がかわいい。携帯公式の待ち受け画像になっています。ちなみに、管理人の待ち受けはコレを使用しています。
さて、ハンター教授の基地の迷路のしくみは、犯罪者の行動パターンをコンピュータに覚えさせることで運用しているとのこと。
データ化されている犯罪者がとる行動に応じて、システムが作動するというやっかいな代物。
しかも、不二子が調べたところによれば、コレクションには対した値打ちはないらしい。
ハイリスク・ローリターンな仕事だから、今回はやめたほうがいいという次元・五右ェ門・不二子。
ルパン「破るのが難しいからこそ、やりがいがあるってもんだ」
いーなあ、このセリフ。まさに不可能に挑戦し続ける男・ルパン三世です。
銭形警部「わしは手を貸すぞ」って、とっつぁんのためでしょ。
結局、次五不は、今回の仕事はおりることに。銭形いわく「金の切れ目が縁の切れ目」
ルパン「やっぱり俺は孤独な男」とモノローグ…えっ、とっつぁんがいるじゃない!

【コンピュータとチェス】
コンピュータ相手にチェスをするハンター教授は、ルパンがやってきても余裕しゃくしゃくです。
今はもう、コンピュータ相手では、チェスは勝つことが難しくなっています。
1978年だと、まだ人間の方がコンピュータよりもチェスでは優位に立っていた時代ですね。
コンピュータと人間のチェスに関する勝敗の歴史はこちらで。

【名コンビ?ルパンと銭形警部】
基地の床が人物識別装置になっています。
コンピュータ=ルパンの分身になっているので、ルパンが相手をしても埒が明きません。
ルパンのデータは記録されているために、データのない警官である銭形が歩くことになりました。
ルパンをおんぶしている銭形警部の図がかわいいです。
青木悠三氏絵コンテ作品、ということもあり、随所にコミカルでモダンな図が見られるのも本作の魅力です。

銭形の行動パターンを分析するコンピュータ「 まともな人間の思考ではありません」…一体、どんな思考なんでしょう。
銭形「わしを仲間にしてよかったな、ルパン」…だから、とっつぁんのために来たんでしょーが。
金庫にたどり着いたものの、特殊ガラスで防壁されており、あの手この手を使うけれども、破ることができません。
銭形「わしの運命はおまえが金庫を開けられるかどうかにかかってんだ」
やっと、本当のこと言いました!
わしは警部をクビ、お前は金庫を開けられない泥棒で、二人揃って引退だという銭形。どこまでマイペースな思考回路なんでしょう。
しかし、そこでルパンがひらめきます。
ルパン「この一文銭は値千金だぜ」

【コンピュータかルパンか】
ハンター教授の部屋に行き、チェスをしながら会話をするルパン。
ルパン「泥棒とチェスってのは終わるまでわからないものなんですね」
ルパン「人間にはコンピュータにはないもの、感情ってものがあるんだぜ」
そういいながら、一文銭を見せるルパン。
それを見た教授は、金庫が破られたと思いこみ、慌てて駆けつけます。
実は、これは全てルパンのブラフ。
教授に金庫が破られたと思い込ませ、冷静さを失ったところを、後をつけて金庫に入ります。
この展開が実に見事です。
本作品の放送は今から30年前。現代(2008年)に至るまで、コンピュータは飛躍的な進歩を遂げました。
そのため、過去にコンピュータを描いた作品はどうしても古臭さを感じさせてしまいがちです。
しかし、本作のルパンの勝利の方法は、2008年でも充分通用する方法だと思います。
ルパンの勝利は、コンピュータと真っ向勝負をするのではなく、コンピュータの管理者との「人間対人間」の勝負に持ち込んだ点にあります。

【最後はやっぱり仲間】
しかし、ハンター教授は、この基地(飛行機)は刑務所に着いたところだ、お前の負けだと言い張ります。
ルパン「この飛行機を運転したのは俺の仲間だよ。」
パイロットとスチュワーデスに変装していた次元・五右ェ門・不二子。
飛行機は、ルパンのアジトに到着していたのです。
一度は袂を分かったように見せかけて、最後はちゃんと助けに来る3人。
不二子いわく「勘違いしないで。コレクションのいい買い手が見つかったからよ」とのことだそうですが。

【泥棒になるくらい真剣に】
ハンター教授のコレクションを運び出すル次不、ゴエは3人が運んできたお宝を船に乗せる係です。
そんなルパン達を追いかけてくる銭形警部。
ルパン「安心しなよ、とっつぁんの分け前ちゃんとあるから」
そんな言葉に耳も貸さず、銭形はルパン達を逮捕しようとします。この切り替えの早さも常人では計り知れないところです。
しかし、あっさりとルパンたちに投げ手錠を返されてしまいます。
なんでだ、昨日はあんなにかっこよく逮捕できたのに、と悔しがる警部にルパンから一言。
ルパン「昨日のとっつぁんと今日のとっつぁんは別人なの」「俺達を捕まえたけりゃ、泥棒になるくらい真剣にならないと。」
普段のとっつぁんは真剣ではないのでしょうか。
警部はルパン逮捕が生きがいらしいので(2nd「ルパンは2度死ぬ」「射殺命令!!」などなど)、
逮捕してしまうと生きがいがなくなってしまうというジレンマがあるわけで
すよね。
このあたりの相矛盾する銭形警部のルパンへの思いいれは、全 シリーズを通して考察していくしかないのでしょうか。

【考え方一つ、見方一つで…】
管理人が本作で最も評価したい点の一つは、「考え方一つで現実が変わる」ということをコミカルに分かりやすく描いている点です。
1、銭形警部にとっては、ただの一文銭がご先祖様の大事なお宝。
2、そして、そのただの一文銭が、勝負の全てをひっくり返す「値千金」な役割を果たす。
3、コンピュータにデータを取られてしまっているのなら、データを取られていない人間に相手をさせればよい。コンピュータは応用が利かないからそこが付け入る隙になる。
4、コンピュータを相手に真っ向から挑むのではなく、そのコンピュータを管理している人間を揺さぶることで、鉄壁のコンピュータ防壁を破る。
5、いつもルパンを逮捕できない銭形警部だが、心意気次第であっさりルパン達を逮捕できてしまう。しかし、その心意気がなくなってしまうと、またルパンを逮捕できなくなってしまう…。


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