[STORY] 17
 オイルダラーを狙え

更新日:2008年3月7日

放映日:78年1月30日
脚本:田上雄
絵コンテ:新田義方
演出:御厨恭輔
作画監督:北原健雄、児玉兼嗣

・不二子大活躍。がんばれルパン。
本作の見どころは、後半パートの不二子の活躍です。
一方でルパンはいいところはあまり無し。
セカンド的お約束で、
【不二子「助けてルパン〜」、ルパン「ふ〜じこちゃん」で不二子を助ける】というパターンが定着していますが、
本作はいつもとは違います。
次&五は、銭形を撃退するシーンが見せ場でした。

・なかなか手強い敵。ローレンス三世
ルパンは終始、ローレンス三世にやられっぱなし。
ここまでルパンが押されるのも珍しい展開です。
ルパンの作戦は、国王の変装も、発信機もすべてお見通し。
あげく、カプセル爆弾まで飲まされてしまう有り様。
それも大口を開けたところにぽーんと入れられます。このお間抜けさがセカンドならではのご愛嬌。
最後にはルパンファミリーそろって、銃殺されそうになります。
何か作戦があるのかと思いきや、ル次五とも汗を流しているだけ…。
不二子の機転でなんとかなりましたが、いやはや。まあ、こんなときもありますよね。
「砂漠に骨埋めてでも」ってルパンは言っていましたが、あやうく本当に埋めるはめになるところでした。

しかも、ローレンス三世を名乗るこの男、本 当のロレンスの子孫ではなかったという事実。
人を動かすために、アラビアの英雄・ロレンスの名前を利用していたという悪党でした。
アラビアのロレンスの子孫を名乗るゲストは、本作以外では、セカンド「ベールをはいだメッカの秘宝」で、
ロレンスの娘であるというパトラ・ロレンスが登場します。(実は不二子の変装なのですが)
ちなみに、史実の「アラビアのロレンス」こと、トーマス・エドワード・ロレンスは、生涯独身、子どもがいませんでした。

・どこかしらアガサ・クリスティの話を思わせる世界観
舞台は砂漠地帯。スリリングな展開に、意表をつくラスト。
オリエンタルなBGMにのって展開する物語(この曲なんていうんだろう?大野さん作曲なのかしら)
クリスティは、夫が考古学者であったこともあり、砂漠地帯を舞台にした作品を多く残しています。

・レアアイキャッチの回
ルパンが椅子に腰掛けていて、銃を天井に向かって撃つと、「ルパン三世」と書かれた板が落ちてくるバージョンです。
このアイキャッチが登場するのは、初期だけでした。中〜後期もたまにやってほしかったなあ。

・旅の舞踏団に扮するル次五不。
とにかく不二子の踊りに注目です。
不二子の踊り子の衣装が、適度に下品で適度に可愛くていい感じ。ベールをかぶっているのも素敵です。
ローレンス三世を誘惑することが目的なのだから、お洒落さよりも分かりやすいお色気が必要ですからね。
ちなみに、Yル「お子様が好きなスポーツ」でも、ル次五が旅の舞踏団に変装します。
Yルでは五右ェ門が女装して(!)踊り子「ルミちゃん」になり(!!)将軍を誘惑します(!!!)
…Yルが1998年。20年の時代の流れを感じますねえ。
1998年当時、ファンの反響はさぞや(賛否両論)大きかったのではないでしょうか。
ちなみに、管理人はこのYルのエピソードは嫌いではありません。

・裏切りは女のアクセサリー?
冒頭でも書きましたが、本作の不二子は大活躍。
誘惑したローレンス三世のテントに行くと、隙 を見つけて銃を叩き落し、その銃を突きつけます。
そのときに、「私の名前は、峰不二子」と名乗るのですが、このシーンがカッコいい。
結局、この場は、ローレンス三世が一枚上手で、ル次五ともに捕まり、銃殺されるはめに。
ル次五が何も出来ずにいるところ、「殺さないで。私はこいつらのいいなりになっていただけなんだから」と(見え見えな)泣き落とし。
ルパン「不二子、裏切るって言うのか」
次元「だから女は嫌だってんだ」(←このセリフ、有名な次元のセリフですが、このシーンで言ってたんですね)
ゴエ「生きてたら八つ裂きにしてやるぞ」
ここで、ゴエに対して「べー」と舌を出す不二子が可愛い。
不二子の演技に騙されたのか、下心が沸いたのか、ローレンス三世は不二子を解放させます。
ローレンス三世「あの細腕で何ができる」
そこで、不二子がル次五に「あんたたちみたいにどじな男はまっぴらよ」
まあ、確かに。今回はそう言われても仕方ないかな…。
暴れまくる三人。しかし縛られているのでただジタバタ暴れるだけ。それはそれでおもしろいシーンではあります。
しかし、おかげで銃殺刑は翌日に延期されました。

再び、ローレンス三世のテントに呼ばれた不二子は、「 東洋の精力剤」と言い含め、ローレンス三世に睡眠薬とカプセル爆弾を飲ませます。
カプセル爆弾、不二子が持っていたのねー。と思いつつも、このシーンはなかなかの緊迫感。
そこで、ローレンス三世が「アラビアのロレンス」の子孫でもなんでもないことを聞きます。
睡眠薬で寝たローレンス三世から、カプセル爆弾のリモコンを探し出し、外へ。
ローレンス三世の部下達に見つかりますが、「おまえと仲間の命は補償する」と言われて、リモコンを渡します。
不二子「ほんとに?」
この時の増山さんの演技がすばらしい。不安そうで、どこかほっとしている声。
自分と三人の命が、自分一人にかかっていることへの不安、それでもその不安を表には出せない状況。
不二子はこれくらいの不安は充分に耐え切れる女性ですが、やはり精神的にキツイ場面だったろうと思います。
そこで、ようやく状況に出口が見えて、ほっとした、でもまだ安心はできないかもしれない、そんな声でした。
かように、今回は不二子のおかげでル次五が助かったわけです。

ルパンが天才的ひらめきを駆使したり、次 元のマグナムやゴエの斬鉄剣でピンチを脱出したり、
銭形の乱入で思わぬチャンスを得たり、というパターンもいいですが、
不二子がルパン達を裏切ったように見せかけて、その才気とお色気でみんなを助ける、という演出ももっと見たいものです。テレスペで。

ところで、ルパン達は不二子の「裏切り」は 自分達を助けるための演技である、ということを最初から分かっていたのでしょうか。
ルパンにだけは分かっていてほしいところですが、本作のルパンはいいとこ無しなので…。

・ル次五不の黙祷のポーズにも個性が。
ルパンとゴエは南無阿弥陀仏と言っています。
次元は西洋式に胸に手をあてています。
不二子は、頭を下げて黙祷。

このシーンが各人のナショナル・アイデンティティを表している、と 考えると非常に興味深いシーンです。
ゴエは日本式。不二子もまあ、こんな感じでしょう。

西洋かぶれの次元は、西洋式のやり方で。
次元の西洋的な振る舞いは、非常にサマになっています。
今回に限らず、次元が、フランス人の血を引くルパンよりも西洋的に振舞うことがあります。
それは、彼が西洋(次元の場合はアメリカでしょうか)に憧れるものの、
西洋の血を引いてないからこそ、より西洋的な振る舞いをするのかもしれません。

そしてルパン。彼は原作で「地球人さ」と言うような人間です。( 原作「サンフランシスコ編」で銭形警部に)
「アルセーヌ・ルパンの孫である」ことに誇りを持っているが、それはイコール「フランス人の血をひく」ことを誇りとしているというわけではないようです。
そんなルパンにとっては、今回はたまたま日本式でやってみたと言うことなのかもしれません。
しかし、ここで、E・ゴッフマン「役割距離」の概念を援用してみると、
彼はフランス人の血を引いているからこそ、あえて日本的に振舞ったのかもしれないとも考えられないでしょうか。

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