携帯版はこちら    QLOOKアクセス解析

  

COLUMN 1

  「お宝」は種切れなのか?

更新日:2008年3月2日


「お宝が種切れになってしまったから、『ルパン三世』はつまらなくなってしまった」という議論があります。
果たして、本当にそうなのでしょうか。

セカンドシリーズの中でも傑作といわれる「ターゲットは555M」「華麗なるチームプレー作戦」は、どちらもお宝そのものは、宝石というシンプルなもの。
その宝石も、凝った薀蓄があるわけでもありませんし、そのお宝を盗むための因縁も、ルパンにはありません。
あくまで、ルパンは欲しいから盗む(自分の欲望に忠実)、泥棒だから(仕事。怪盗アルセーヌ・ルパンの孫であるという血の誇り)、盗むことは不可能と言われているから(ルパンの辞書に「不可能」の 文字はない)盗むのです。  

『ルパン三世』作品の見せ場は、「何を盗むか(what)」ではなく「どうやって盗むか(how to)」がテーマとして描かれていることが、作品のおもしろさにつながるのではないでしょうか。
「どうやって盗むか」を丁寧に描写する中で、ルパン、次元、五右ェ門の個人技にも見せ場が登場するわけです。
三人の個人技が連携したときに、キャラクター同士の関係性も描かれてきます。
さらに、そこに不二子がどうやって絡んでくるのか(邪魔するのかor助けるのか)、
銭形はどのようなルパン逮捕の作戦を立てるのか、という見せ場が生まれてくるのでしょう。

そう考えると、「お宝」の種切れが、『ルパン』がつまらなくなってしまったことの直接的な原因ではない、と言えるでしょう。

しかし、「どうやって盗むか」というプロセスを考えることは、「何を盗むか」を閃くより難しいことでもあります。
ここが、脚本家や監督の腕の見せ所となってくわけです。

2008年4月にリリース予定の、『Green vs Red』では、「ルパン三世」の名を名乗る人物=ヤスオとルパンとの戦いが描かれるとのこと。
今作では、「ルパンが「自分の名前」を取り(盗み)返す」というテーマになっているようです。
監督の宮繁之氏も、このように語っています。

「彼自身を楽しめませるためには、これはもう自分の名前をかけて戦うことぐらいしかない。
そうすれば命をかけて遊ぶことができるし、そのときぐらいはさすがにちょっとあわてるかなと思ったんです」
(「『Green vs Red』トークイベント 完全レポート!」『ルパン三世officiaマガジン vol.15』所収)

これは、完全な私見ではありますが、このように「何を盗む(取り返す)か」にこだわっていると、作品が前評判だおれになってしまうことになりがちです。
残念なことに、前例はいくつか存在しています。
奇を衒った設定をだすことで、インパクトを狙うよりも、「どうやって盗むか」をじっくり描いて欲しいと思うファンもいるのではないでしょうか。
もちろん、設定が上手く生かされた作品もたくさん存在します。
近年の長編作品では、「ファーストコンタクト」、「お宝返却大作戦」は、それぞれ「ルパンファミリーの出会い」「お宝を返す」という設定を見事に昇華していました。

ルパンが「盗まれた自分自身のアイデンティティを取り戻すために戦う」というテーマは『VS複製人間(マモー)』で既に描かれていますが、
『マモー』では、クローン人間という(当時としては)先進的で、SF的なモチーフと絡めて描かれたテーマを、今作ではどのように描き出すのかに注目したいです。

『マモー』は、ルパン三世長編作品第一作にして、最高傑作とも言われる作品です。
『Green vs Red』は、どのような作品になるのでしょうか。そして、どのように評価されるのでしょうか。

INDEX     PAGE TOP

Back to Top Back to Index 拍手する

inserted by FC2 system